15年ぶりにプラスに転じた九州の転入超過
2012年2月23日
本格的な人口減少社会を迎えたというので、出生数-死亡数という自然増減ばかりに目が行きがちだが、転入-転出という社会増減からも目が離せない。先日、住民基本台帳をもとにした2011年の人口移動報告が総務省から発表された。いつものように九州7県のデータを入力して足し算していたら、とても興味深いことに気づいた。
それは、1997年以降2010年まで14年連続してマイナスを続けてきた九州7県の転入超過数(転出超過が続いたということ)に歯止めがかかったということだ。サブプライム住宅ローンバブルが崩壊した2007年と、その翌年のリーマンショックに見舞われた2008年については、ともに3万人以上の転出超過となっていたのが、2009年の転出超過は2万人(19,910人)、2010年は1万3千人(13,225人)へと転出超過幅が縮小し、昨年(2011年)の1年間については、ついに843人と絶対数こそ少ないものの、15年ぶりに転入超過に転じたのである。
九州が転入超過となった理由は、福岡県が転入超過数を増やしつつ、他の6県が転出超過幅を縮めたことによる。
とりわけ、日本全体が定住化傾向を強めている中にあって、福岡県の転入者数の増加ぶりは目を見張る。47都道府県のうち昨年1年間に転入者数が10万人を超えたのは、東京都、神奈川県、埼玉県、大阪府、千葉県、愛知県そして福岡県の7都府県である。この7都府県だけで全国の転入者総数の54%を占めているが、なかでも1年前(2010年)に比べて転入者増加数が最も多かったのが福岡県である。福岡県の2010年の転入者数は98,435人だったのが、2011年は103,497人へと5,062人も増えた。福岡県からの転出者数についても、2010年の95,762人から2011年の93,778人へと1,984人減少しているので、結果転入超過数は7,046人にも達した。
福岡県への転入者が増えて転出者数が減った背景には、東日本大震災や福島第1原発事故の影響で被災地住民の避難と企業のリスク分散立地がある。ちなみに被災地の転出者数増加率をみると、福島県69.4%増、宮城県12.8%増となっており、その受け皿としての役割を果たした結果とも言えるだろう。さらに、JR博多シティ開業効果も影響していよう。新しい駅ビルで働く6~7千人の多くはもちろん地元在住者だが、中にはUターンしてきた方や、九州初出店の店舗の場合(アミュプラザ博多229店舗中九州初84店舗、博多阪急660ブランド中九州初83ブランド)、立ち上げ時点から落ち着くまでのしばらくの間、あるいは九州2号店の出店先を探るために、本社からの応援部隊が福岡に移り住むケースも見られた。とにかく、新しい雇用の場ができるということは、転出を抑制し転入を促すことにつながる。
このように福岡県への転入超過数が増えているとは言え、その実態は「福岡市」への転入増加である。全国の1718市町村(東京都特別区を1つの市としてカウントした場合)について、転入者数から転出者数を引いた「転入超過数」をみると、第1位が東京都特別区の35,435人であるのは当然として、第2位は大阪市でも名古屋市でも横浜市でもなく「福岡市」の11,129人となっている。被災地から最も遠く、アジアに最も近い九州の中枢都市が再び注目を集めているのである。
15年ぶりに転入超過となった九州の社会移動だが、果たして今の状況を維持できるのかは未知数である。
長期的に見ると、1980年以降、過去30年間の九州の社会移動の歴史を振り返ると、バブル経済崩壊後に大都市部の景気が極端に悪化した1993~96年の4年間のみが転入超過であった。
1991年のバブル崩壊の4年後に阪神大震災があり、その年に戦後最高値となる円高に見舞われて極端な景気後退に直面するなか、九州の人口は転入超過となった。今回は、2007年のサブプライム住宅ローンバブル崩壊の4年後に東日本大震災に見舞われて、再び戦後最高値となる円高となるなか、九州の人口は15年ぶりに転入超過となった。サブプライム住宅ローンバブルをかつてのバブル景気と置き換え、東日本大震災を阪神大震災と置き換えて考えてみると、昨年の転入超過は15年前の転入超過ときれいにオーバーラップするのである。要するに、九州は自力で転入超過となったのではなく、大都市の雇用吸収力の低下で転入超過となったのである。大都市の景気が上向けば再び転出が顕著になるという構造は、あまり変わっていないような気がする。
ちなみに、阪神大震災の2年後に消費税率が引き上げられ、東日本大震災の3年後に再び消費税率が引き上げられようとしている。阪神大震災の2年後に消費税率が引き上げられた1997年は、北海道拓殖銀行破綻・山一証券自主廃業など戦後初となる金融危機が訪れ、デフレが決定的になってしまったのだが、果たして東日本大震災から3年後に消費税率が引き上げられる2014年は、…。歴史は繰り返すのである。
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