再び増える九州へのクルーズ船寄港
2012年1月12日
昨年の九州は「新幹線イヤー」だったが、今年は「LCCイヤー」かつ「外国クルーズ船イヤー」になりそうだ。東日本大震災まで増加傾向にあった九州への外国船籍のクルーズ船寄港は、「原発事故の風評被害」と「過去最高の円高」によって激減した。ところが今年は過去最高のクルーズ船が九州に寄港するという明るい兆しが見え始めた。
かつてクルーズ船といえば欧米人による長期にわたるロングクルーズ船が時々寄港する程度だったが、4~5年前から、クルーズ船観光が盛んな欧米の船会社が、経済成長著しい中国に着目するようになり、中国発着で東シナ海沿岸を1週間以内でまわるショートクルーズ船の寄港が急増してきた(お値段もリーズナブルで、5万円から10万円が多い)。九州のアジアへの地理的近接性が生かされている好例だ。中国発着のクルーズ船が増えている最大の理由は、中国人の所得水準の向上だが、中国の企業でも、社員のやる気を引き出すためにインセンティブツアー(ご褒美旅行)を導入する機運が高まっているのに加えて、個人での海外観光ビザの発給要件が緩和されたことも大きく後押ししている。
ここで過去4年間の外国クルーズ船の九州への寄港回数を振り返ってみると、2008年が87回(第1位は鹿児島港の30回)、2009年が103回(第1位は長崎港の48回)、2010年は152回(第1位は博多港の61回)である。毎年、寄港地の1位が交代するほど、博多港、長崎港、鹿児島港の3港は激しい誘致争いをしている(これら3港以外では、屋久島の宮之浦港と宮崎県の細島港)。
この2010年の152回という寄港回数は全国的に見て多いのか少ないのかというと、2010年の全国の実績は299回なので、九州の全国シェアは51%、クルーズ船の過半数が九州に寄港していることになり、九州は外国クルーズ船寄港の一大拠点となっていることが分かる。港別に見ても、全国1位が博多港で、第2位には那覇港が入っているが、3位鹿児島港、4位長崎港と続き、神戸港の32回や横浜港の19回を大きく上回っていた。
ところが、昨年2011年は原発事故の風評被害と円高のため、当初は2010年を上回ると見られていたのに、キャンセルラッシュに見舞われて、結果、55回と前年の約3分の1にとどまってしまった。ただ、昨年の秋口以降は回復傾向にあり、今年2012年は現時点で九州運輸局が把握しているだけでも博多港の55回を筆頭に、九州全体では少なくとも118回の寄港が予定されているので、再び今年はクルーズ船復活の年となりそうだ。
そして今年はクルーズ船について大いに期待できる動きが2つある。
1つはハウステンボスが2月29日に運航開始する長崎-上海間のクルーズ船である。船は3月14日まで週1往復で不定期運航し、3月16日以降は週2往復で定期運航する(片道約22時間)。注目すべきは料金で、片道運賃は9,800円、2週間前の早割なら7,800円(いずれも燃油サーチャージ代などは別)。客室利用料が掛からない座席は約500席あり、特別仕様の座席と個室は別途利用料が掛かる。レストランは4カ所設け、朝、昼、夜の3食セットで2千円、5千円、1万円の3コースが用意されている。中国と東京、大阪を結ぶ定期便は6~7万円と中国人にとって訪日観光の敷居はなお高いので、十分、商機はある。
今年期待できるもう1つの動きは、韓国の船会社「ハーモニークルーズ」(本社・ソウル)が、釜山と仁川の両港を拠点として、博多港、長崎港、別府港、鹿児島港の各港を寄港地とする「九州クルーズ旅行」を始めることである。第1便は2月3日に仁川を出発し、済州島-長崎-鹿児島-別府-博多-釜山を6泊7日で回る。年間では100便弱の運航を予定している。韓国の船会社が日本へのクルーズ船を運航するのは初めてのことで、アジアの観光客誘致に力を入れている九州の自治体にとっては絶好のチャンス到来となりそうだ。
ただ、九州観光推進機構が「総合特区」案件として、就労に制限がある留学生を通訳ガイドに活用するという「九州観光「おもてなしの輪」創造特区」を申請しているが、なかなか国から規制緩和を認めてもらえないなど、クルーズ船の経済効果を引き出す上での課題は少なくない。
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