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流通戦争と域外資本活用社会

2002年11月14日
 昨年
12月に九州最大のスーパー寿屋が民事再生法適用を申請し、今年3月には、九州最大の百貨店岩田屋が自主再建を断念した。消費不況とオーバーストア状態が続くなか、流通業界はまさに「戦争」状態にある。そして、九州最大のスーパーと百貨店の再建に大きく寄与したのは、いずれも九州域外資本であった。流通業界を見ている限り、九州は自立化とは全く逆の域外資本依存社会に向かっているように思える。
 
このような流通業界の「戦争」は、九州最大の集客力を有する福岡の都心=天神地区で顕著に現れている。その天神地区では、過去3回にわたって激しい流通戦争が繰り広げられてきた。
 
第一次天神流通戦争は、1970年代中盤に勃発した。九州唯一の地下街が完成した時期である。第二次流通戦争はバブル経済ピーク期の1989年に、天神地区の一等地に二つの大規模複合商業施設が立地した時である。南九州からも、JRや高速バスを使ってOLが頻繁に福岡を訪れるようになり、彼女達が「有明族」「つばめ族」「フェニックス族」と呼ばれ始めた時期である。そして、1997年には西鉄天神駅と高速バス停車場を取込んだターミナルビルに東京資本の百貨店が進出し、第三次天神流通戦争が勃発した。あれから五年を経てみると、域外資本が勝ち組になったのと対照的に、地場資本は防戦一方である。
 
さらに、今月1日、天神から地下鉄で5分の距離にある博多駅裏に九州最大規模となる家電専門店がオープンした。今回の場合も東京資本の九州初進出で、半径5キロ圏内に家電販売額上位5社全てが立地するのは全国初のことである。開店から3日間で30万人を集客した。オープン翌日の朝刊には、「会社を休んで来た」という鹿児島市の男性会社員のコメントが紹介されていた。天神流通戦争は域外資本主導で外延的に拡大しつつ、九州全域を商圏として飲み込もうとしている。
 
次なる第四次天神流通戦争がいつ訪れるのかというと、その時期は既に確定している。天神地区および周辺の遊休地3カ所に大型商業施設が立地する2004年である。奇しくもその時期、九州新幹線新八代~鹿児島中央(現西鹿児島)間が開通し、福岡と鹿児島が2時間10分で結ばれる。九州の中枢・中核都市間がクロスハイウェイに加えて新幹線でも結ばれることによって、天神地区のサバイバルレースは九州全域を巻き込んだ流通戦争に拍車をかけるに違いない。南九州の地方都市にも、その戦火は飛び火するのである。
 
では、地方都市の流通業者は、どんなスタンスで九州全域での流通戦争に挑めば良いのだろうか。そのヒントは、福岡一極集中の歴史を紐解く中に見出せる。
 
バブル期の福岡一極集中現象を端的に表現した「有明族」や「つばめ族」が一時的なブームにとどまらず定着したのには、福岡が時間消費型のアミューズメント都市に脱皮したことが大きく寄与している。今の福岡は、大相撲、プロ野球・サッカー、ミュージカル、歌舞伎、ニューヨークのジャズに加えて漫才が楽しめる。バブル期以前にこれだけのアミューズメント機能をフルセットで備えることが可能だったのは、東京・大阪・名古屋といった大都市のみであった。これらのアミューズメント機能と商業機能が相乗効果を発揮して、福岡一極集中は加速された。ところが、冷静に考えてみると、これらの高次都市機能のソフト面は、全て域外資本によってもたらされているのに気付く。プロスポーツチームは域外から誘致したもので、ミュージカルやジャズ、歌舞伎も舞台に立つのは東京あるいは海外のタレントである。すなわち、福岡の都市機能集積の歴史は、域外資本のソフトを呼び込んで都市の活力に生かした歴史であるとも言えるだろう。いかにも商人の街らしい戦略である。
 
九州全域を見渡した時、域外資本を都市の活力に生かす技は福岡がもっとも秀でており、多くの地方都市は「自力」で地域活性化を検討するばかりである。ネットワークが整備され、域外資本との競合が必至な現在、域外資本の参入を拒むばかりではなく、むしろ域外資本を呼び込んで、都市そのものが新陳代謝する勇気をもつことが重要な都市戦略となりつつある。九州全域での流通戦争は、域外資本「依存」社会になる前に、域外資本「活用」社会に転換する施策の立案を求めているのである。

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