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2016年10月

過疎地で復活する貨客混載

2016年10月13日

 先日、宮崎県の山間部に位置する諸塚村(もろつかそん、面積当たりの林道密度日本一)を車で走っていたら、宮崎交通の大型路線バスが走っていた。山間部での大型路線バスは、ほとんど絶滅危惧種状態にあるので、珍しいなぁと思って見入ったら、ボディに文字が書かれていた。「ヒト・ものハコぶエコロジーバス」。地元の方に聞いたら、座席の真ん中あたりに宅急便を載せるためのスペースが確保されているのだという。中山間地域での宅配便なので、それほど大きなスペースは必要ないそうだ。
 過疎地域では、赤字バス路線の維持が困難になる一方で、宅配業者にとっては非効率な配送で利益が出にくい。お互いが困った状況にあって、バス会社が、宅配業者の輸送経路の一部を引き受けて荷物を運ぶという連携を進めている。かつて、国鉄時代には、前数両が旅客車両で後数両が貨物車両という「貨客混載」は頻繁に見られたが、スピードアップの要請や定時制確保のため、あるいは道路整備が進んでトラック輸送が鉄道貨物を奪っていったため、貨物車両と旅客車両は昭和50年代に分離された。これを「客貨分離」という。
 ところが時代は変わり、過疎地で赤字路線バスを使った「貨客混載」が復活しそうな気配になってきた。このことについて、昨日、共同通信がうまいことまとめて配信している。見出しは..「バスや鉄道、宅配を肩代わり」。
 九州では昨年10月、ヤマト運輸が、宮崎交通と共同で宮崎県中央部の西都市と西米良村間45㎞を結ぶ路線バスで荷物を運ぶ貨客混載の取り組みをスタートさせた。すると、宅配便のドライバーは、拠点となる都市部の営業所から山間部の配達区域まで1日に何度も往復する必要がなくなっただけでなく、ガソリン代などの負担が軽減され、さらに宮崎県内だとその日のうちに配達できるようになったり、集荷の受付時間が延長可能になるなどサービス拡充につながり、地域住民にも喜ばれるという結果が得られたという。そこで今年6月からは、宮崎交通にとってはバス路線網の維持が、ヤマト運輸にとっては物流の効率化が、同時に課題となっている宮崎県北部の延岡市-高千穂町間50㎞、日向市-諸塚村間50㎞を結ぶ2つの路線で各2台、計4台の「貨客混載」バスの運行を開始した。ちなみに、ヤマト運輸では、お役所言葉の「貨客混載」とは呼ばず、「客貨混載」と呼んでいるので、ネットで検索してもヒットしにくい。人を載せるバスに宅配荷物を載せるのであって、貨物を運ぶトラックに人を乗せるのではないという、バス利用客への配慮からだ。
 全国的にこのような貨客混載の取り組みが見られるようになったのは昨年6月から。場所は本州最東端の岩手県重茂(おもえ)半島。東日本大震災の時の津波が国内観測史上最高の高さ40.5メートルまで達したことで知られる三陸海岸の中でも最大の半島だ。「津波は、ここまで来る。ここから下には、家を作ってはならない」と警告していた石碑でも知られている。そんな重茂半島の場合は、貨客混載区間の距離が150㎞以上と長いので、2つのバスで宅配便の荷物をリレー配送している。さらに北海道でも先月下旬から4つの路線で貨客混載事業が始まり、そして今月3日からは熊本の産交バスとも提携して、人吉市と五木村間30㎞を結ぶ路線バスで貨客混載事業が始まった。九州の中山間地域ではまだ広がる可能性があり、買物弱者対策と赤字路線バスの維持対策と宅配業者の収益改善戦略が同時進行し始めた。宮崎交通も産交バスも10年以上前に産業再生機構の支援を受けたことが示している通り、過疎地の赤字路線バス維持が、厳しい経営を強いられてきた企業だ。ところが驚くべきことに、今回の貨客混載事業には補助金が全く投入されていない。この民民の取り組みは、もっと高く評価されるべきだろう。おそらくバスの改修には数十万円を要していると思われるが、その程度の補助金ならば、誰も文句は言わないだろう。
 さらに貨客混載は鉄道事業者とトラック運送会社間でも見られる予定だ。上越新幹線と接続する特急列車が乗り入れていた第三セクター鉄道「北越急行(新潟県南魚沼市)」のほくほく線。昨年3月の北陸新幹線開業で特急列車が廃止になり、売上高が9割減る中、何とか減収分を穴埋めしようと、こちらは佐川急便と貨客混載事業の提携を決めた。今秋から試行し、来年度から本格実施する予定だという。赤字ローカル線が余力のある輸送力を活用して新たな収益を確保するという試みは、九州の6つの三セク鉄道(平成筑豊鉄道、甘木鉄道、松浦鉄道、南阿蘇鉄道、くま川鉄道、肥薩おれんじ鉄道)にとっても参考になるのではないだろうか。
 さらに、ヤマト運輸と佐川急便に日本郵便を加えた3社は、東京メトロや東武鉄道と組んで、車両の1両に荷物を積んで運ぶ実験を先月から今月にかけて10回の実験を実施中だ。大都市で鉄道会社と運送会社が連携する理由は、「渋滞の解消」とトラックドライバーの「人手不足対策」だ。まさに、「都会版貨客混載」事業と言える。
 バスや鉄道を活用した貨物輸送は、まだまだ多くの可能性を秘めているように思える。とりわけ競合者が少なく、公共交通空白地域が広がる一方の離島、半島、中山間地域が多くを占める九州の場合、規制緩和次第では、トラックが有料で人を運んだり、自家用車が有料で荷物を運んだり、あるいは赤字路線バスがグリーンツーリズム観光客の自転車もいっしょに有料で運んだりといったことが可能になれば面白い。国の交通政策審議会や社会資本整備審議会が、2015年12月、過疎地等での物流網維持に向けて、バスや鉄道の輸送力を活用した貨客混載の検討を進める必要があると指摘しているように、過疎地では積極的に規制緩和して良い分野ではないだろうか。

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総じて足踏み続く九州の景気

2016年10月6日
 今週月曜日、9月の日銀短観が発表された。全国の全産業のDIは+5。九州の全産業のDIは+11。足もと4年間は、九州のDIは連続して全国を上回り続けている。安倍政権になったからなのか、麻生財務大臣になったからなのか、あるいは大牟田出身の黒田日銀総裁になったからなのか、どの政策がどれだけ九州に効いているのかよく分からないが(全国より九州に、より効果があるのは金融政策より財政政策だが)、とにかく全国よりは良い。
 ちなみに、日銀短観は今から42年前の1974年(昭和49年)に第1回調査が始まり、今回で170回目を迎えた。過去170回のうち九州の景況感が全国を上回ったのは92回。下回ったのが62回、全国と同じDIだったのが16回。92勝62敗16引分ということで、勝率を「勝ち数÷(試合数-引分数)」で計算すると、5割9分7厘。今年のホークスのレギュラーシーズン勝率が6割飛んで6厘なので、過去42年間の「九州の景況感」の「全国の景況感」に対する勝率は、だいたい今年1年間のホークスの勝率と同程度と考えられる。だから何だというご指摘もあろうが…。
 九州のDIがあの熊本地震直後の6月短観でさえも+5で全国の+4を上回ったからくりは、3か月前にお話しした通り、九州の短観には、絶好調の沖縄を含んでいるからだ。今回もその沖縄が大きく影響している。沖縄のDIは、6月の+39からさらにパワーアップして今回は+42。四半世紀前のバブル期を上回る絶好調ぶりが続く。沖縄が絶好調な理由は、公共投資と国内観光客数が堅調に推移するなか、那覇空港にLCCを次々と呼び込むのに成功したうえに、クルーズ船(那覇港と石垣島の石垣港、宮古島の平良港ひららこう)が、寄港をお断りしてもやってくる(今年は30件お断りしたにも拘らず108%増、来年分の予約は既に47件をお断り済み)結果、インバウンドが今年に入ってからも前年を5割以上上回って伸びていることだ。それと決定的に本土と異なるのが、「人口増加」が続いていることだ。定住人口も交流人口もともに増えているのだから、沖縄県内の胃袋の数は相当増えているので、単純に食費だけを考えても景気が悪くなりそうにない。
 沖縄でとくにすごいのが、スーパー、コンビニに代表される「小売業」だ。6月のDI+60から今回は+80へ。そして沖縄県小売業界の先行き見通しDIは、遂に、初めてお目にかかった「+100」だ。
 そんな絶好調の沖縄県を除いたところでの「九州7県」のDIを独自に再計算してみると、「+7」で、全国の+5を2ポイント上回ってはいる。
 では、今回、九州7県のDIが全国を上回るのに寄与した地域、あるいは業種は何か。
 ズバリ、地域で言えば「熊本県」。業種で言えば「観光関連」ということになる。
 来週末には最初の震度7から6か月を経過する熊本のDIは、前回の▲16から今回は+8へと一気に24ポイントも増えている。熊本県内の製造業でも、被災した工場が8月頃には続々と再開したので、半導体生産が多くを占める「電気機械」が▲27から+18へ。自動車部品と二輪車が多くを占める「輸送用機械」が▲25から±0へと改善傾向を示して、シリコンアイランドとカーアイランドの一翼を担う熊本製造業も落ち着きを取り戻しつつあると言える。
 一方、九州全体の「観光関連」のDIは、前回の▲24から今回の+21へと45ポイント改善した。「九州ふっこう割」様様といったところだが、今回の+21でも実は熊本地震前には戻っていない。昨年の9月時点では+30、12月+26、3月+26だったことを思うと、まだ本調子ではないということになる。とりわけ、熊本県の観光関連DIは未だに▲34にとどまっており、前期の▲80という総崩れ状態よりもはましになったが、インフラ整備が追い付いていないので、まだまだ復興の道のりは長いと思われる。ちなみに観光施設の被害が大きかった大分県の場合、観光関連DIは、前期▲50と大きく落ち込んだものの、今期は+22へと大きく改善している。従って、九州の観光業界では、熊本県を何とかしなくてはならないという課題は残ったままだ。
 昨日10月5日水曜日から10~12月期の「九州ふっこう割」第二期の第二弾が発売されている。9月までよりも割引率が小さくなったとは言え、熊本県と大分県は最大50%(平均20%)、その他の県は最大40%(平均10%)と依然お得感はあるので、年内はこれでいける。問題は180億円の補正予算額を使い果たした後の来年だ。九州ふっこう割無かりせば、今頃どんな状況になっていただろうかと考えただけでもぞっとするが、同時に、せめて熊本観光だけは年明け後も一定の措置を継続していただけないものだろうか。

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